【法律ニュース】家族信託と暴力団と相続放棄と
こんにちは。福岡市早良区西新で弁護士をしている盛一也(もりかずや)です。
さて、早速ですが、本日のyahoo!ニュース(※1)になかなか興味深い記事がありましたので、取り上げます。
タイトルは「工藤界トップ、複数の土地を家族信託 福岡県警『賠償逃れ』指摘」(※1)というものです。
事案としては、特定危険指定暴力団「工藤会」(北九州市)のトップで総裁の野村悟被告(78)が、委託者となり、親族を受託者
として、その保有不動産等(土地23筆で計7,068㎡相当とのこと。)を譲渡していたという委託者兼受益者(野村被告)と親族
(氏名等不詳)によるいわゆる家族信託があったとのことで、弁護士がその組成に関与したとのことです(※1)。
記事を見ると法改正を求める声もあるということで、現行法上は、このような信託は特段問題なく、財産逃れができることになることを前提としているようです。
このような信託の効用を「倒産隔離機能」(※2)などと言いますが、信託の利用としてある程度想定されていた事項かと思いますので、法改正が妥当かは判断が分かれることのように思えます。
実際に、被害者が野村被告に対し、損害賠償請求を行い、その判決が確定し、その後、相続が発生した場合に、親族が相続放棄(※3)できるのか等言う点やそもそも相続前に家族信託契約がいわゆる詐害行為(※4)として取り消しうるか等法律的には興味深い論点が複数あるように見受けられますので、今後の動向をウォッチする必要がありそうです。
なお、登記情報サービス(※5)を利用すれば、前記土地がいつ信託契約の対象になったかなどについて、誰でも調べられるので、
興味がある方は深堀りしてみてはいかがでしょうか?
1 https://news.yahoo.co.jp/pickup/6542396
2 https://www.shintaku-kyokai.or.jp/trust/more/function.html
3 民法939条等 https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_13/index.html
4 民法424条等
5 https://www1.touki.or.jp/