【法律コラム】「紀州のドン・ファン」の遺言有効が確定 手書きの遺言で争わないために

こんにちは。
福岡市中央区六本松で法律事務所を運営している弁護士の盛一也(もりかずや)です。
最近は個人の相続及び交通事故と法人業務に力を入れています。
最近、相続登記、弁護士費用特約とコラムを続けて書いており、自分でも驚くほどブログの調子が良いです。
この勢いが続くうちに、もう一本書いておきたいと思います。
さて、先日、「紀州のドン・ファン」と呼ばれた和歌山県田辺市の資産家の方の遺言をめぐる裁判で、最高裁判所が親族側の上告を退け、遺言を有効とする判断が確定したと報じられました(※1、※2)。
報道によれば、遺言書は赤いペンで「個人の全財産を田辺市にキフする」といった内容が書かれた手書きのもので、遺産は約13億円とされています(※3)。
裁判の経過を整理すると、次のとおりです。
・令和6年(2024年)6月 和歌山地方裁判所:遺言を有効と判断
・令和7年(2025年)9月19日 大阪高等裁判所:一審を支持し、遺言を有効と判断(※4)
・令和8年(2026年)9月30日付 最高裁判所:親族側の上告を退ける決定(※2)
親族側は、「筆跡が不自然」「田辺市に寄付する合理的な動機がない」などとして遺言の無効を主張していましたが、一審・二審とも、ご本人が過去に書いたメモなどと比べて筆跡や体裁が似ていることから、本人が自分で書いたものと認めたと報じられています(※2、※4)。
なお、最高裁の決定は、新しい法律の解釈を示したというよりも、一審・二審の判断を維持したものと理解するのがよさそうです。
このニュースは、手書きの遺言(自筆証書遺言)について考えるうえで、とても示唆に富んでいると思います。
①自筆証書遺言には、守らなければならない形式がある
民法では、自筆証書遺言は、遺言する人が全文・日付・氏名を自分で書き、印を押さなければならないとされています(民法第968条、※5)。
なお、平成31年(2019年)1月からは、遺言書に添付する財産目録については、パソコンで作成したものや通帳のコピーなども使えるようになっています。
②形式を守っていても「本当に本人が書いたのか」で争いになり得る
今回の件のように、手書きの遺言は、内容に不満のある親族から「本人の字ではない」と争われることがあります。
筆跡鑑定が出し合いになると、解決まで何年もかかってしまうことも珍しくありません。
③争いを防ぐための選択肢
筆跡や遺言能力をめぐる争いを少しでも避けたいのであれば、公証役場で作成する「公正証書遺言」を選ぶのが一般的です。
また、手書きの遺言を作る場合でも、法務局で遺言書を保管してもらう「自筆証書遺言書保管制度」(令和2年7月開始)を使えば、紛失や改ざんの心配が減り、家庭裁判所での検認手続も不要になります(※6)。
ちなみに、今回の親族は兄弟姉妹の方々と報じられていますが、兄弟姉妹には、法律上最低限の取り分である「遺留分」が認められていません(民法第1042条)。
そのため、遺言が有効とされた以上、兄弟姉妹の方が遺産を受け取ることは難しいということになります。
「財産の一部を地元の自治体や、お世話になった団体に寄付したい」という、いわゆる遺贈寄付のご希望も、最近では珍しくなくなってきました。
ご自身の思いをきちんと実現するためにも、遺言は「書き方」と「残し方」が大切です。遺言の作成を考えている方は、お気軽にご相談ください。
本日はこれくらいに致します。
※1 NHK「“紀州のドン・ファン” 「遺言書は有効」判決が確定 最高裁」
https://news.web.nhk/newsweb/na/nb-2040023325
※2 TBS NEWS DIG(Yahoo!ニュース)
https://news.yahoo.co.jp/articles/1b2cd50aede7097e5544cf9d6950d28245890d50
※3 時事ドットコム「「紀州のドン・ファン」遺言、有効確定 田辺市に遺産13億円寄付―最高裁」
https://www.jiji.com/jc/article?k=2026100200879&g=soc
※4 熊本日日新聞「紀州ドンファン遺言、二審も有効 遺産13億円を田辺市に寄付」
https://kumanichi.com/articles/1896378
※5 民法(e-Gov法令検索)
https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089
※6 法務省「自筆証書遺言書保管制度」
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji03_00051.html

